04 飯田 善彦

横須賀市鴨居の市営住宅など、集合住宅の新しい形を生み出し続けてきた建築家の飯田善彦。エコを「当たり前のこと」として考える飯田をチームに引込むことで、このプロジェクトは進んできた。飯田は当初から、エコマンションというテーマを超えて、新しい集合住宅のプロトタイプを描いていた。
飯田善彦建築工房HP
建築の役割から考える、新しい集合住宅のかたち。

Q.1 この吉祥寺プロジェクトに携わったきっかけは?

もともと別の物件で、三菱地所の仕事をいくつかやっていましたが、それらはいわゆる監修という役割で、ある程度基本的な計画ができた後で、ストーリーをつくってその物件の位置づけを整理したり、公共スペースなど部分的にデザインを手がける仕事でした。そんな中、ちょうどリーマンショックの直後ぐらいでしょうか、エコマンションというテーマで、全く新しい集合住宅をつくりたいという相談があった。小さな物件だけど、今まで三菱地所が手がけてきたマンションとは違う切り口でやりたい、設計監理もやらせてくれる、と。これは面白い話だなと思いました。

Q.2 どのあたりが面白いと思ったのですか?

通常、大手ディベロッパーのマンションは、ゼネコンの設計部が設計します。つまり設計施工で受注するわけです。何平米のタイプが売れ筋だとか、3LDKならキッチンはこのタイプだとか、ありとあらゆる箇所に過去のデータが活かされていて、ある一つの定型の中で差別化していくような作業。今回はそうではなく、集合住宅そのものの「質」みたいなところまで踏み込んで、全く新しいものをつくりたいという相談でした。それを、新興のベンチャー企業ではなく、メインストリームにいる三菱地所がやることが面白いと思いました。実は自分の仕事に置き換えてみると、環境配慮型住宅や、エコロジカルというテーマ自体は、ずっと取り組んできたことで、別に珍しいことではありません。影響力のある企業が、新しい生活の提案をしていくことにすごく意義があると思ったし、自分にとってのモチベーションにもなりました。

Q.3 具体的にプロジェクトが始まってみていかがでしたか?

プロジェクトのスタート段階から、メンバーと議論しながら、一つひとつ模型をつくって形にしていく。コミュニケーションが濃密でしたね。今までのマンションの仕事ではなかったことです。もともとディベロッパーというのは、商品価値のあるものを大量に供給して利益を上げていくのが使命です。そういう意味では、新しいことをやる事自体にリスクがあるし、いろいろなことを引きずりながらやったのかもしれませんが、メンバーがみんな意欲的で、ユニークだった。平生さんが最初から考えていた、この物件が完成していくプロセス自体をプレゼンテーションする、というアイデアも面白いなと思いました。つくり方そのものが、今までにないマンションだと思います。

Q.4 設計に関しては、どのあたりが他のマンションとは違う?

例えば、これまでのマンションは、セキュリティやプライバシーを保証することが商品価値になっていて、近隣関係が希薄になりがちでした。でもほんの数十年前までは、隣に誰がいるか分かっていて、留守番を頼んだり、緊急のときには何かお願いできるような関係があったわけです。建築というのは、つくり方によってはそこにいる人のコミュニケーションをシャットアウトしてしまう可能性がある。だから僕は、できるだけいろんなことが起きるようにつくります。このマンションでは、全体がひとつの家のような設計になっていて、ロビーに月に1回あつまって、飲み会やりましょう、みたいなことがおきるかもしれない。「経験を共有する場」であること、それが建築の役目だと思っています。

最後に、あえてこのプロジェクトの課題をあげるとすれば?

このマンションは9戸の物件ですが、次に50戸とか100戸とか、仮にそういう展開をするときに、「この規模のマンションだからできたんじゃない?」っていう風にはならないようにしていかなければならないと思う。このマンションはある意味“プロトタイプ”なので、設備も少し詰め込みすぎたかもしれない(笑)。このマンションをもとにして、新しい集合住宅のあり方を探り続けること。三菱地所の今後の大きな使命だと思います。

※社名・所属部署・肩書・名称などは取材当時のものです

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