05 三神 明仁

広告/プロモーション担当として、このプロジェクトの計画段階から参加。不動産広告だけでなく、人材採用の広告にも携わってきた経験から、その企業の考え方、ありのままの姿を伝えて“納得”してもらう広告のあり方を信条とする。
美辞麗句ではなく、理由(ワケ)を語る。新しいプロジェクト“ならでは”の伝え方。

Q.1 このプロジェクトに携わった経緯は?

三菱地所さんとは長いお付き合い。住宅関連のブランディングを色々とお手伝いさせていただいています。その中でも、今回は異色のプロジェクトだと思います。広告というよりは、物件の企画から参加させていただいた。通常マンションの広告は、事業費の一定割合を広告予算として、ある程度お決まりのパターンがある。内容も「三鷹の杜に、贅を極めた9戸」みたいなイメージ重視の世界になりがち。一方、この仕事では、物件の根本にある考え方、その特徴づけ、売り方まで一緒に議論しながらつくってきた。だから伝え方も、決して歯の浮くような美辞麗句を並べるのではなく、一つひとつの特徴とその背景にある考え方、企画のプロセスまで事実ベースで伝えていくというスタンスを貫いています。

Q.2 そういったアイデアはどこから出てきたのですか?

実は当事者である、プロジェクトメンバーの皆さんから出てきたアイデアです。広告屋としては「本当にいいんですか?」という感じでしたが、とても共感しましたね。昔、三菱地所が企業広告をやりはじめたときも、過去に売った物件をどういう思いでつくったのか、その背景を語るというのをブランド広告として展開しました。その当時、業界では珍しい広告だったと思います。ディベロッパーからすると、過去の売り終わった物件の話をしても仕方ない、今売りたい物件を見せた方がいい。だけど消費者側からすると、過去にどういう思いで物件をつくってきたか、それを知ることは企業への信頼につながると思います。このWEBサイトも、事実と背景をきちんと伝える内容にしました。物件ができる前に広告やモデルルームだけで販売する“青田売り”じゃなくて、完成してモノを見た上で買っていただく“完成売り”。だからこそ、“実”の部分を見て欲しいと思います。

Q.3 このようなプロジェクトが実現した背景は?

こんな言い方が正しいか分かりませんが、「時が来た」という風に感じています。2008年にプロジェクトがスタートした年に、ちょうど洞爺湖サミットが開かれて温室効果ガスの削減目標が定められました。その後エコポイント制度が出てきたり、2009年にはプリウスが新車販売台数で1位になったり、住宅に関しても環境への意識が高まってきています。プリウスなんてもともと特殊なポジションであって、日本で一番売れるような車じゃなかったと思うんです。時代の変化のスピードってすごいなと感じましたね。
さらに、このマンションのテーマはエコだけじゃない。当初三菱地所内では「エコマンションをつくれ」というミッションだったのですが、プロジェクトメンバーは、それよりも新しいものがつくりたい、新しい売り方をしたいと試行錯誤を重ねました。あのメンバーが集まったからこそできた新しいカタチ。集まるべきタイミングで、集まるべき人が集まった。今思うとそんな感じがします。

Q.4 プロジェクトメンバーの皆さんはどんな方々ですか?

「やってみよう」という気概がとても強い人たちの集まりだと思います。特にプロジェクトリーダーの平生さんは、時代の流れを読む力をお持ちです。学生時代からヨットに乗られていて、プライベートでもクルーとして同乗したことがありますが、その時に納得しました。海面を見ながら、風がこう回ってくるからこっちに行くとか、ヨットはキャプテンがどう舵を切るかで決まるわけです。これが風を読む力、時代の流れを読む力なのかと。今回のプロジェクトも、そうやって直感的に時代のど真ん中に来ていると思います。ちなみに平生さん、普段はあれだけ温和なのに海に出るとめちゃめちゃ怖い(笑)。「ちゃんと前見ろー!!!」「はいーっ!!」みたいな(笑)
プロジェクトの進め方も面白かったですね。最初にちゃんとプランニングして、コンセプトを固めて、という進め方を好まない。まず手を動かそうという考え方。模型で形をつくりながらチューニングしていく。“ゴタク”をならべるより、経験を優先する。そこに真実があって、経験が積み重なってブレークスルーポイントが生まれる。このWEBサイトのコンテンツも、同じつくり方だったと思います。とにかく先にコンテンツを書きためて、それを編集して形になった。ものづくりの妙という感じがしています。

最後に、あえてこのプロジェクトの課題をあげるとすれば?

広告に携わる立場からすると、冷静に見ることも大事だと思っています。業界の中では非常に面白いチャレンジなんだけど、一歩引いてみると、実は一般消費者からすると驚くべき話ではないかもしれない。例えば、賃貸のデザイナーズマンションには普通にこういうのあるじゃん、みたいな。賃貸はオーナーの意向次第で、いくらでも新しいチャレンジができますからね。お客さまも気に入らなかったら住み替えればいい。でも、30年、35年のローンを組むときはそうはいかない。つくる側も、1戸1戸、売れなかったときのリスクをすべて自社で背負っている。だから、どうしても最大公約数のマンションになってしまう。分譲マンションは、お互いに保守化した中でマッチングするモデルになっているんです。この構造が分かれば分かるほど難しさを感じていました。それにしても、今回のプロジェクトは思いきったプロジェクトだと思いますけどね。企画一つ、設備一つひとつ相当な時間かけてつくってきた(笑)。どういう方に住んでいただけるか、とても楽しみです。

※社名・所属部署・肩書・名称などは取材当時のものです

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